ホルモン依存性疾患とシャタヴァリについて

シャタヴァリの持つフィトエストロゲン(植物エストロゲン)の効果については
よく質問をいただきます。

まず、みなさん ご存知と通り、乳がんや子宮体がん、子宮筋腫などの発達にはエストロゲンが大きく作用しているといわれていますので、これらの疾患を持っている人には女性ホルモンを調整する治療法が使われています。

ですのでフィトエストロゲン(植物エストロゲン)を含む食品、アマニや大豆、そしてシャタヴァリなどは避けた方がいいという見解があります。

しかし、アーユルヴェーダ医の見解はまた異なります。

むしろ積極的にシャタヴァリなどはとることが推奨されています。

そして2000年ころから、現代医学でもフィトエストロゲンはとった方がいいかもしれない。いや、むしろとった方がいい。という論文がいくつも出てきています。①②③④⑤ 

その作用機序は、

1 植物エストロゲンは、人間がもっている本来のエストロゲンの作用を持っている

2 エストロゲンはエストロゲン受容体(レセプター)と結合することによって、その効果を発現する(受容体にはαとβがあって、それによって作用や強さが異なるので、少し複雑になるけど、今回は割愛します)

3 フィトエストロゲンは レセプターに速やかに結合し、また結合力が弱く離れやすい

4 フィトエストロゲンは、本来の人のエストロゲンよりも作用が1/100くらい弱い。

これらの条件によって、エストロゲンの作用が強い人(筋腫などができやすいひと)には、エストロゲンレセプターを植物エストロゲンが椅子取りゲームのように先に奪ってしまうので、その発現する作用が低下します。ゆえに、筋腫の成長を抑制する方向にはたらきます。

またシャタバリは別の作用によって、筋腫を抑制しますが、それについてはアーユルヴェーダ医の見解を後で紹介します。

また、更年期などやそのほかの理由によってエストロゲンの分泌が弱い人にとっては余っているレセプターにフィトエストロゲンが結合するので、その作用を穏やかに向上させることになります。

つまり、エストロゲンの作用が強すぎる人には弱める方向に、よわい人には強める方向に働くことになります。⑥

実は人の体内で起きる植物化学物質の伝達は 本来人間がもっている物質に類似する物質を提供することによって、そのレセプターに結合させて作用を補強しているものが多いので、このように、その作用が強い人にはその作用をよわめ、弱い人には補強するという方向でバランスをとれるように働くことが多いのです。

ですので、結論を言うと アーユルヴェーダ医の中では、子宮筋腫にはシャタヴァリを使った方がいい。という方が多いです。⑦⑧

しかし、現代医学では、植物ホルモンは エストロゲン作用を促進する、または抑制する と見解がまだ分かれていて、その濃度が高い時には抑制に働くが 濃度が薄い場合には促進に働くことがある とする論文も出ています。

ですので、あとは自己責任による判断ということになります。

最後にアーユルヴェーダによると、子宮筋腫は、不適切に形成されたカパの過剰生成と
悪化したアパーナ ヴァータによって引き起こされます。過度の精神的ストレス、長期にわたる感情の抑圧、運動不足、カパとヴァータを悪化させる食品 (特に活力を失ったジャンク フード、小麦、精製糖、過剰な乳製品) の摂取により、消化器系が悪化し、ドゥシタ カパ (不適切に形成された損なわれたカパ) が生成されます。
このドゥシタ カパはヴァータによって生殖器系に運ばれ、そこで正常な生理学的機能を果たすことができなくなります。

代わりに、蓄積してアパーナ ヴァータの動きを妨げ、悪化したヴァータによって子宮の筋肉組織に押し込まれます。
その結果、筋肉組織の細胞知能(プラーナ)の機能不全が起こり、異常な組織代謝と成長、すなわち「筋腫」の形成につながります。

子宮筋腫は主にカパ蓄積障害と考えられていますが、このようにピッタとヴァータの変位も伴うことも多く、治療はトリドーシャのバランスをとるために深く作用する必要があり、動きの遅いカパを根絶するために時間をかけて十分に持続する必要があります。

筋腫の成長や線維症の場合、カパが主な悪化要因ですが前述したように、ヴァータによる作用によって子宮にカパが蓄積していて特にアパーナ ヴァータは嚢胞や腫瘍の成長と発達に関与しています。
またピッタ ドーシャは消化の火の乱れという形であらゆる病気の原因となります。
シャタバリは悪化したヴァータ ・ピッタを鎮静し体内の過剰な熱を鎮め、アグニを改善します。

ということで、シャタヴァリも使われるようです。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/bpb/24/4/24_4_351/_article
植物性エストロゲンとエストロゲン受容体αおよびβとの相互作用

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5535874/
エストロゲン受容体を標的とする植物化学物質:副作用よりもむしろ有益?

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6390141/
植物性エストロゲンとその健康効果
植物性エストロゲンとホルモン依存性腫瘍

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25826470/
食事成分と子宮平滑筋腫 

https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2023/fo/d3fo04702d/unauth
エストロゲン受容体を介した植物化学物質の健康効果 

⑥植物性エストロゲンが子宮筋腫にいいのはなぜ?
https://hapilife.info/phytoestrogens/

⑦プラネットアーユルヴェーダの見解
https://www.planetayurveda.com/library/role-of-shatavari-in-uterine-fibroids/

⑧アロパシーとインド医学体系に基づく子宮筋腫の治療
https://www.gavinpublishers.com/article/view/treatment-of-uterine-fibroids-based-on-allopathy-and-indian-system-of-medicine